黒川能とは|鶴岡市で500年続く神事能|王祇祭・水焔の能はいつ見られる

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黒川能とは|鶴岡市で500年続く神事能|王祇祭・水焔の能はいつ見られる

黒川能(くろかわのう)は、鶴岡市黒川の春日神社に500年以上伝わる神事能です。

演じるのは職業の能楽師ではありません。春日神社の氏子、つまり地元の人たちです。

観世流など現在の五流のどれにも属さず、独自の伝えかたを守ってきました。1976年に国の重要無形民俗文化財に指定されています。

「見に行きたい」と思ったとき、迷うのがいつ・どこで見られるのかです。黒川能は公演というより、年中行事として神前に奉納されるものだからです。

見られる機会は大きく3つ。2月の王祇祭、9月の水焔の能、そして通年開いている王祇会館です。

王祇祭と水焔の能は、どちらも申し込みが要ります。王祇祭(2月1日)の観覧申し込みは11月30日まで、水焔の能の前売は8月31日まで。どちらも開催のかなり前に締め切ります。

黒川能とは|鶴岡市黒川の氏子が守ってきた神事能

伝わる場所山形県鶴岡市黒川
奉納先春日神社
(創建は807年と伝わる)
文化財国指定
重要無形民俗文化財
(1976年5月4日指定)
伝えてきた人春日神社の氏子
保存団体公益財団法人
黒川能保存会
電話0235-57-5310
見学施設黒川能の里 王祇会館
公式サイト黒川能保存会
地図Googleマップで見る

黒川は鶴岡市の南東、旧櫛引地区にある集落です。ここの春日神社に、室町時代から途切れずに能が伝わってきました。

特徴は「神様に見せるための能」だということ。観客に見せる興行として始まったものではありません。

だから舞台は劇場ではなく、神社の能舞台と、氏子の家です。その形が500年続いてきました。

もうひとつ知っておくと分かりやすいのが、氏子が「上座(かみざ)」と「下座(しもざ)」の2つの座に分かれていることです。以下、両方まとめて「両座」と呼びます。

黒川能はいつ・どこで見られる?

見られる機会は、次の一覧のとおり。名前を押すと、その説明へ移動します。

機会時期場所申し込みと締め切り
王祇祭毎年
2月1日・2日
当屋(民家)と
春日神社
2月1日は抽選
(11月30日まで)
2月2日は不要
水焔の能毎年
9月第1土曜
櫛引総合運動公園
野外ステージ
前売は8月31日まで
当日券もあり
王祇会館通年
(水曜休館)
鶴岡市黒川不要
入館料400円

このほか、春日神社の祭りや羽黒山の花祭りでも奉納されます。鶴岡市と保存会が案内している年間の日程は次のとおりです。

2月1日・2日王祇祭(旧例祭)
当屋と春日神社
3月23日祈年祭
春日神社能舞台
5月3日例大祭
春日神社能舞台
7月15日羽黒山花祭
出羽三山神社(羽黒山頂)
9月第1土曜水焔の能
櫛引総合運動公園
11月23日新嘗祭
春日神社能舞台

これらは例年の日程です。その年の詳細は保存会の演能予定表で確かめてください。

なお、2月最終土曜に行われていた「黒川蝋燭能」は、演能予定表で開催休止と案内されています。

王祇祭(2月1日・2日)|観覧の申し込みは11月30日まで

黒川能の本番が、毎年2月1日と2日に行われる王祇祭(おうぎさい)です。春日神社の年4回の例祭のなかで、もっとも重要な祭りとされています。

この名前になったのは戦後のこと。もとは「正月の神事」「旧例祭」と呼ばれ、地元では俗称「豆腐祭(とうふまつり)」で通っています。

豆腐と呼ばれるわけは、祭りでふるまわれる凍み豆腐。祭りの前に地区で約1万本が焼かれ、凍らせてから味噌煮にし、「二番」というタレを付けて食べます。

2月1日は民家で夜通し、2月2日は神社で

黒川能の2月1日の舞台は、「当屋(とうや)」と呼ばれる氏子の民家です。近ごろは公民館を使うこともあります。

2月1日 未明|王祇様を当屋へ迎える
神様が宿る「王祇様」を当屋に迎え、家の中に舞台を組みます。座衆が一堂に会する「座狩(ざがり)」という総点呼と、ふるまいが続きます。
2月1日 夕刻|大地踏から夜通しの演能
幼児がつとめる「大地踏(だいちふみ)」で始まり、能5番、狂言4番を夜を徹して演じ続けます。終わるのは明け方です。
2月2日|王祇様が春日神社へ戻る
神前で両座がそれぞれ舞います。ご神体を手に階段を駆け上がる「尋常事(じんじょうごと)」などの神事をはさみ、夕刻に終了。

上座と下座は2月1日、別々の当屋で同時に演じています。両座が同じ場にそろうのは2月2日だけです。

2月1日は抽選。2月2日の神社は予約不要

当屋で行われる2月1日は民家が会場のため、席に限りがあります。希望者が多いため、抽選です。

受付期間7月1日〜11月30日
申し込み方法はがき・封書
公式サイトの申込フォーム
メール
書くこと住所・氏名・連絡先
同行者
結果12月に通知
費用の目安1万円程度
(寄進料と仮泊所の経費など)
申し込み先黒川能保存会
王祇祭観覧案内所係
電話0235-57-5710

「仮泊所」は、夜通しの行事の合間に休むために観覧者向けに用意される場所です。自分で宿を手配してもかまいません。

10人以上の団体は受け付けられない場合があります。2027年2月1日の分は、2026年11月30日が締め切りです。

いっぽう2月2日、春日神社での神事と演能は事前の予約が要りません。当日その場で申し込めば見られます。

初めて黒川能を見るなら、2月2日の春日神社からという選び方があります。抽選に通らなくても行けて、上座と下座がそろう場面を見られます。当日の受付方法や駐車場は、保存会(0235-57-5710)に確かめてから出かけると安心です。

水焔の能(9月第1土曜)|野外ステージで見る黒川能

鶴岡市が主催する野外の能が「水焔の能(すいえんののう)」です。毎年9月の第1土曜日に開かれます。

開催日2026年9月5日(土)
※毎年9月第1土曜
時間開場17:00
開演18:00
会場鶴岡市櫛引総合運動公園
野外ステージ
雨天時櫛引スポーツセンター
定員300名
入場料前売2,000円
当日2,500円
高校生以下は無料
前売の期限8月31日
申し込み先鶴岡市櫛引庁舎
産業建設課
電話0235-57-2115
駐車場約400台・無料
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日が落ちてから、野外の特設舞台で演じられます。王祇祭より気軽に見られるのが、この日のいちばんの利点です。

2026年の演目は、能『黒塚』と『春日龍神』、狂言『三本柱』。出演は上座です。あわせて櫛引東小学校の児童による舞囃子『高砂』も演じられます。

前売券の申し込みは、鶴岡市櫛引庁舎の産業建設課へ。電話は0235-57-2115です。

前売券の申し込みは8月31日まで。当日券(2,500円)もありますが、定員は300名です。確実に見たいなら前売で申し込んでください。

黒川能の里 王祇会館|通年で見学できる

祭りの日に合わせられなくても、黒川能に触れられる場所があります。春日神社のすぐそばに建つ「黒川能の里 王祇会館」です。

住所鶴岡市黒川字宮の下253
電話0235-57-5310
鑑賞時間9:00〜16:30
休館日水曜(祝日を除く)
12月29日〜1月3日
入館料大人400円
小中高生200円
高齢者・障害者300円
年間鑑賞券3,000円
(3名まで随時無料)
団体割引20人以上で1割引
車でJR鶴岡駅から11km
庄内あさひICから8.5km
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展示ホールには、上座・下座・春日神社が所蔵する装束や能面が並びます。国指定の衣装や能面、室町から鎌倉期の宝物も収蔵されています。

祭りの日でなくても本物を見られるのが、ここのいいところです。視聴覚室では映像で黒川能を知ることもできます。

黒川能仕舞上演
希望に応じて上演してもらえます。予約制で、約1か月前までに王祇会館(0235-57-5310)へ申し込みます。
春日神社の観光ガイド
神社と境内周辺を観光ガイドが案内してくれます。1人100円、予約制。申し込みは王祇会館へ。

水曜が休館日です。遠くから行く場合は曜日を確かめてから出かけてください。臨時の休館日が出ることもあるので、公式サイトのお知らせも見ておくと確実です。

上座と下座|同じ演目を演じない2つの座

上座と下座は、王祇祭ではそれぞれ別の当屋で同時に演じます。そして両座は、同じ番組を演じません。狂言だけが例外で、両座が同じものを演じます。

伝わる番組は500番
能の番組(演目)は現在500番が残っています。江戸末期から明治にかけて、両座がそれぞれ数を増やしていきました。
狂言は40番ほど
狂言は現在40番ほど。こちらは上座・下座が同じ番組を演じています。
能面は300を超える
狂言面を含めた所蔵数です。酒井藩から拝領したものや、室町期の面もあります。
装束は500を超える
上座・下座・神社の所蔵をあわせた数です。「燭光狩衣」「辻が花小袖」など国指定のものもあります。

面と装束の一部は、王祇会館の展示ホールで見ることができます。

謡(うたい)も独特です。東北なまりで、低くゆるやかに謡う節づかい。舞や着付けに残る古い手法も、黒川能ならではのものです。

黒川能の歴史と由来|酒井藩の上覧能と、戦中も休まなかった祭り

黒川能の由来をたどると、ずっと安泰だったわけではありません。むしろ何度も消えかけました。

元禄2年(1689年)、庄内藩主・酒井家から上覧能の問い合わせを受けたときの黒川の返答は、「役者は60人、演じられる能は10番、狂言をやれる者はいない」というものでした。

それでも藩が支度金を出して支援。1か月ほど稽古を積み、翌元禄3年(1690年)、4代藩主・酒井忠真の前で式三番と能7番を演じました。

江戸時代|上覧能のたびに力を取り戻した
上覧能は幕末まで10回ほど続きました。そのたびに装束や諸道具を賜っています。県の指定を受けている装束のほとんどは、このとき酒井藩から拝領したものです。
明治維新|庇護を失っても止まらなかった
藩の後ろ盾はなくなりました。それでも黒川の人たちは他所での演能や指南を精力的に行い、かえって活動的になります。
戦中|王祇祭は一度も休まなかった
保存会の記録によれば、昭和の大戦のあいだも王祇祭は一度も休みませんでした。

そして1976年、国の重要無形民俗文化財に指定されました。500年を氏子の手だけでつないできたことが、その理由です。

まとめ

黒川能は「公演を見に行く」ものではなく、神事の場に立ち会うもの。だから見られる日も、申し込みの期限も決まっているのです。

行き方を整理すると、次のとおり。

  • 手軽に見たい → 9月第1土曜の水焔の能(前売は8月31日まで)
  • 本番を見たい → 2月1日の王祇祭(抽選の申し込みは11月30日まで)
  • 抽選に頼らず本番を見たい → 2月2日の春日神社(予約不要)
  • いつでも触れたい → 王祇会館(水曜休館・入館料400円)

申し込みや当日の詳細は、黒川能保存会の公式サイトで確認できます。

山形県内のほかの秋の祭りは、こちらの記事から。

この記事について
公益財団法人 黒川能保存会の公式サイト(演能予定表・王祇会館・王祇祭・能の諸相ほか)、鶴岡市の公式ページ(黒川能の心 王祇祭・演能日程・王祇会館・観能申込みのご案内)、文化庁「文化遺産オンライン」をもとに作成しています(2026年8月時点)。
日程・料金・申し込み方法は変わることがあります。お出かけの前に公式サイトでご確認ください。